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非日常への扉口で

苦楽園に隠れ家のごとく居を構える「遊楓亭」で、不思議な時空への扉は開かれた。

わたしのデッサンの先生である画家・待井健一先生と、北欧のケルト音楽を主に演奏活動をされている音楽グループ・シャナヒーさんの、絵画と音楽のコラボ展に行ってきました。

遊楓亭が醸し出す神秘的な雰囲気と、日常と非日常の狭間を表現する絵画と、北欧の伝統音楽のリズムが溶け合う幻想的な時間は始まった。

***

さっそく演奏されたのは「Butterfly」と「Scottish reel set(スコティッシュリールセット)」。

その音楽に耳をそばだてていると、軽やかにその世界の中へと誘い込まれていく。

シャナヒーさんのご挨拶をはさんで、3曲目の「Hear Me」は静かに漂う一曲だ。

まるで水面をかすれるようにして、ふわふわと浮いているような気持ちになる。

目をつむり、耳をすませると、先生の不思議な世界観を魅せる絵画の世界へと入り込んいく。

水色の路地に佇み、遠くの景色を眺め、風を感じ、魚と会話をするの。

絵の中の主人公のように。


続いての「Sulla Lulla」は、北欧の子守唄という。

なんて柔らかい音色なのでしょう。

母の愛に包まれ、やさしくて柔らかい手がとん…とん…とんと、リズミカルにからだに触れてくれる。

そんなやさしさに溢れたメロディーに、淡い眠りにつく夢路へと誘い込まれていく。

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2曲演奏する合間ごとに、シャナヒーさんのお話があった。

今回のコラボ展のタイトルは「みずいろの路地」。

コンセプトは「迷い込んだ世界」。

まさにその雰囲気をたっぷりと味わえる時間と空間の中にいた。

軽やかに、心までもがふわふわと宙に浮かぶような、ふしぎな世界。

わたしたちは、重力のない、美しい音色と淡い光の中に漂っていたんだ。

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5曲目の「Scottis Fran Lima(リマのショッティス)」は、北欧の香りがふんだんに盛り込まれた一曲だった。

その演奏する姿は、なんて楽しくて、自由なのでしょう。

もっと自由に発想をふくらませて、心を広げていいんだと、語りかけられた気がした。

そして「Sky Polska(空のポルスカ)」のリズムで、北欧の海辺に沈む夕焼けが見えた。

真夏の夕暮れの海岸で、たくさんの人たちが集まって、歌い、踊り、テーブルを広げザリガニパーティーをしている光景が浮かび上がってくる。

楽しくて、穏やかで、軽やかな日常。

歌はなくとも、歌声が海の遥か向こう側からささやくように響いてくる。

***

先生のお話を聴いていると、デッサンを教わっていた頃の光景が懐かしい光としてよみがえってくる。

あの楽しかった時間からいつの間にか、もう8年も経っていたんだ。

小さな離れのような古めかしい日本家屋の中で、多くの人たちがひしめきあい、この不思議な時間を共にした。

日常の世界と、非日常の世界を行ったり、来たり…

そんな歓談時間をはさんで、セカンドステージが始まる。

***

「Sjung i stilla morgonstumder(静かな朝)」はそのメロディーが奏でられると同時に、朝の空気が鼻先をかすめた。

風になびく草原の薫り。

小花についた朝露がひと滴、草の上に落ちる音色。

少しずつ、一面を明るい世界へと導いく太陽の光。

そんなさわやかな朝の光景が目の前に広がっていった。

続いては「Kuin pimia pilvenreuna(雲端の闇のように)」。

心の奥の静かな叫び声が聴こえてくるようなメロディーで始まった。

ほんのりと、悲しみが、切なさが込められていた。

レンガ造りの建物に囲まれた街を歩き、そこから望む夕焼けの空の遥か向こうへと飛び出したい想いと、今いる場所から離れたくない気持ちが交差する。

迷いの中に、静かな決断が見える。

そんな光景が浮かんでくる一曲だった。


3曲目は「Nobilis Humilis」。

日本語で「木の印象」。

独特な音のリズムの中で、非日常の、なんとも表現しがたい面白みが心の内側から踊り出す。

そこからつながるメロディーは、その独特な音にみずみずしさを加えた。

木の幹に水が与えられ、枝の先へ、梢の先へとのびていく。

林の中で、風に揺られてさわさわと、葉と葉のこすれる音が聴こえてくる。

そこにしか生息しない鳥が羽を休めて、木々が奏でる音楽に歌声を添える。

そして心を癒そうと、なでるように奏でられた「Polnas fran Sexdregae(セクスドレガ地方のポロネーズ)」のメロディーは湖畔を想像させた。

家族が、友人が、近隣の人たちがどんどん集まってくる。

楽しい雰囲気に包まれていく。

民族衣装を身に纏い、水辺で楽器を奏でる。

風景はめざましく移り変わり、草原へ、村へ、町へと飛んでいく。

まるで風が世界を旅するように。

色んな表情で、色んな国へと。

そして「朧ろ月夜」のメロディーによって、日本へと帰る。


ラスト1曲は「雨の中で…」。

ピッチピッチ、チャップチャップ。

水玉の傘をさして、水たまりを飛び越えて。

雨の中はなんてすがすがしいのだろう。

こんな日にこそ町へと出かけ、すれちがう人々と笑顔で挨拶を交わしたい。

雨が地面に降るしずくの音に、心が踊り、からだが弾んでいく。

***

日常と非日常の間で、ときどき振り返りながら幻想世界へといざなわれていく。

そんな夢のような、まぼろしのような、とろけそうな時間だった。

***

アンコール曲は「月の庭」。

なごやかな音色に、ゆりかごのような心地よさを感じる。

静かに、この不思議な空間との別れを惜しみながら。

この扉は、永遠にここに漂っている。

そんな余韻に浸りながら……

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